独学での行政書士試験の難易度、合格率と勉強時間

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試験までの期間『行政書士 難易度』で調べてみると、法律資格の登竜門だから簡単という声もあれば、難関資格なので覚悟して挑むべしとの声もあります。「本当のところ、どっち?」と思ってしまいますよね。そんなわけで今回は『行政書士試験の難易度』について語ってまいります。

合格率から見た行政書士の難易度

まず最初は、統計データから難易度を確認してみましょう。こちらは、過去行われた行政書士試験の合格率です。

行政書士試験の合格率の推移(20年分)

年度 申込者数 受験者数 合格者数 合格率
1996年(平成8年) 43,267 36,655 2,240 6.11%
1997年(平成9年) 39,746 33,957 2,902 8.55%
1998年(平成10年) 39,291 33,408 1,956 5.85%
1999年(平成11年) 40,208 34,742 1,489 4.29%
2000年(平成12年) 51,919 44,446 3,558 8.01%
2001年(平成13年) 71,366 61,065 6,691 10.96%
2002年(平成14年) 78,826 67,040 12,894 19.23%
2003年(平成15年) 96,042 81,242 2,345 2.89%
2004年(平成16年) 93,923 78,683 4,196 5.33%
2005年(平成17年) 89,276 74,762 1,961 2.62%
2006年(平成18年) 88,163 70,713 3,385 4.79%
2007年(平成19年) 81,710 65,157 5,631 8.64%
2008年(平成20年) 79,590 63,907 4,133 6.47%
2009年(平成21年) 83,819 67,348 6,095 9.05%
2010年(平成22年) 88,651 70,586 4,662 6.60%
2011年(平成23年) 83,543 66,297 5,337 8.05%
2012年(平成24年) 75,817 59,948 5,508 9.19%
2013年(平成25年) 70,896 55,436 5,597 10.10%
2014年(平成26年) 62,172 48,869 4,043 8.27%
2015年(平成27年) 56,965 44,366 5,820 13.12%
2016年(平成28年) 53,456 41,053 4,084 9.95%
2017年(平成29年) 52,214 40,449 6,360 15.7%

ここ10年の合格率は6〜15%前後で推移、平均10%

見たところ、合格率は6〜15%前後で推移し、平均するとおよそ10%前後だというのがわかります。この数字だけを見ますと、難しそうな印象を受けてしまうかもしれません。

行政書士試験は毎年約4〜7万人もの人が受験する人気資格です。ここ数年、合格率は上昇傾向にありますが、逆に受験者数・申込み数ともに減少しています。2017年(平成29年度)は、受験者数が約4万人と10年前の3分の2程度まで減少しています。

行政書士試験はあくまで絶対評価&定員がない

行政書士試験は、一般的な学校受験とは違い、絶対評価で合否が判定されます。受験者の上位何%のみが合格する、もしくは定員が決められている相対基準の試験ではないので、問題の難易度がそのまま合格率に反映されます。

ですので、合格率はあくまで難易度の指標の一つとして考えておきましょう。試験センターが公表している合格基準(例年60%)をクリアすること目標にすれば、必ず合格できる試験です。自分がきちんと勉強していれば、周りが落ちていようが関係ありません。

行政書士試験の難易度の変遷

行政書士試験は、2006年度(平成18年)からの旧制度→新試験制度への移行に伴い、試験科目の変更と、記述式試験の導入が行われました。それ以降確実に難易度は上昇傾向にあると言われています。法的思考型(理解型)問題への質的変化も現れ、より深く本質的な知識が問われています。

補正措置(救済措置)があった平成26年

平成26年度には、新試験制度が始まって以来、初めての補正措置(救済措置)が発動し、合格ラインがこの年のみ従来の180点(6割正解)から166点へと変わりました。

平成26年度 合格基準点 について
 次の要件をいずれも満たした者を合格とする。 
(1) 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、110点以上である者。 
(2) 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者。 
(3) 試験全体の得点が、166点以上である者。 
※ 本年度の合格基準は、試験問題の難易度を評価し、補正的措置を講じてあります。 

その理由は、難易度の調整とのことです。この措置により、合格率8.27%合格者数4,043名となりました。例年に比べて平成26年度の試験はかなり難しかったということです。

ただ、補正措置自体はほとんど実施されることはありません。平成26年の事態は異例中の異例だったと考え、基本的に6割(180点)以上の取得を目指すのが大切です。

一定数の記念受験者が合格率を下げている現実

これは行政書士試験に限らずどういった資格試験にも必ずあることなのですが、毎年必ず一定数いるのが記念受験の方です。とりあえず申込んだけど結局勉強しなかった人、志高く勉強始めたものの挫折した人、などが「申込済みだから受けるだけ受けてみよう」というパターンがこういった記念受験にあたります。

こういった記念受験があると、合格率というのは下がってしまいます。記念受験数のデータはなく具体的な数値にすることはできないものの、一定数は必ず存在するため、記念受験者の数だけ合格率が低下=試験を難しく見せている、ということも一定程度言えるでしょう。

そのため、合格率に惑わされずにしっかりと勉強をすれば合格できるんだ、という信念を持って学習を続けることが大切です。

1万人以上の受験辞退者

行政書士試験では記念受験とは別に、申込みしたがそもそも受験しない、という人が毎年1万人以上います。勉強したけど自信がないという方もいれば、勉強していない、時間的都合が悪くなった方もいるでしょう。

ただ、合格率は合格者数÷受験者数で算出されていますので、この人数が合格率などに影響を及ぼすことはありません

合格までの勉強時間からみた行政書士の難易度

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行政書士試験を合格した方の勉強時間を調べてみると、大体の方が勉強時間目安を500~1000時間と記載されています。もちろん内容が最も大切ですが、目安として1,000時間が安全圏という見方をすることも出来ます。

もちろん、人によっては300時間で合格したという人や、逆に1年間勉強を続けたが不合格だった、という方がいるのも事実です。間違いなく言えるのは、試験を合格するために、非効率な学習を続けたらいくら時間をかけても合格できないし、効率の良い学習をすれば学習時間の短縮も可能であるということです。

行政書士試験までの期間と、一日の勉強時間・合計時間の関係

試験までの期間を6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月とした場合、平日と休日にどれだけ勉強をすれば合計何時間勉強ができるのか、というのを簡単な表にしてみました。勉強時間を知る参考にしてみてください。

月別の合計勉強時間の違い

試験までの期間 平日の勉強時間 週末の勉強時間 合計時間
6ヶ月 2時間×120日 4時間×60日 480時間
6ヶ月 3時間×120日 6時間×60日 720時間
6ヶ月 4時間×120日 8時間×60日 960時間
9ヶ月 2時間×180日 4時間×90日 720時間
9ヶ月 3時間×180日 6時間×90日 1,080時間
12ヶ月 1時間×240日 2時間×120日 480時間
12ヶ月 2時間×240日 4時間×120日 960時間

※計算を簡単にするために1ヶ月は30日、そのうち20日間が平日で10日間を休日(週末)と換算しています。

いかがでしょうか。もし6ヶ月前に勉強を初めて1,000時間勉強をしようと考えた場合、平日毎日4時間勉強し、週末はそれぞれ8時間ずつ勉強しなければいけない計算になります。これは仕事をしながらだとなかなかハードなスケジュールです。

こうしたことから、社会人をしながら行政書士試験を受けるなら、なるべく早く始めたほうが1日あたりの勉強時間が少なくても合計の学習時間は伸びることがわかると思います。もちろん合計の学習時間は目安に過ぎませんが、少なくとも半年くらい前、4〜5月には勉強を始めたいというところです。

余裕を持って、ある程度の勉強時間を確保すること

もちろん元々あった知識・下地の有無や、地頭の良さなども差はあるでしょう。私の場合は、一日およそ3時間の勉強を約1年の間にわたって続けました。累計すると、やはりおよそ1,000時間前後はかかっていることになります。

学習効率の良し悪しや地頭の良さなどで、短時間で合格する自信があったとしても、やはり万全を期してある程度の勉強時間を確保しておくことは必要になります。

一発合格も不可能ではない

行政書士試験は、試験の制度上、1年目で全くの初学者でも一発合格することは不可能でありません。

試験に向けた計画をきちんと立ててそれを実践できれば必ず合格できる試験です。しかし、一発合格する人は、数としてはそれほど多くないかもしれません。特に社会人の方などは仕事をしながら受ける方が多いので、最初の一年目はどうしても試験範囲をこなすだけで精一杯になることが多い印象です。

一発合格を目指す場合は、それなりに覚悟を持って臨みましょう。

行政書士の独学で合格する難易度

行政書士試験は、独学でも全く問題なく合格可能です。

もちろん、予備校や学習塾に通った方が良いという報告もあります。予備校などによっては合格率を公開しており、高いところだと合格率40%以上と、実に試験受験者の3倍近い合格率を誇るところもあります。

しかし、だからといって独学合格を諦める必要はありません。さきほどの予備校での合格率の数字には記念受験者の数は当然含まれていませんし、私自身を含め、周りの行政書士でも独学合格した人は沢山いるからです。それは法律の初学者からでも同様です。

他の士業資格試験との難易度比較

本

行政書士試験はその難易度を他の試験と比較されることも多いです。以下は、行政書士とよく比較される士業系の資格を難易度別に表にしたものになります。

難易度:★★★★★★ 司法書士
難易度:★★★★★ 税理士
難易度:★★★★ 行政書士
社会保険労務士
難易度:★★★ 宅地建物取引士(宅建士) 

司法書士との難易度を比較した場合

政書士と司法書士になるのはどちらが簡単?
これは間違いなく司法書士のほうが難しいです。どちらも「書士業」であり、名前だけでこの2つの資格を比べて迷われる方も多いようですが、レベルが全く違います。特にここ最近の司法書士試験の難しさは、最難関の司法試験にも匹敵するといわれています。

税理士との難易度を比較した場合

この場合も、税理士のほうがかなり難しいと言われています。税理士試験は試験科目が11科目あり、そのうち5科目に合格すると資格を取得出来ます。税理士試験では一度合格した科目は一生有効なので、資格取得まで3~4年をかけ、1科目ずつ揃えて合格を目指すのが一般的なようです。 

11科目の内訳は会計2科目(簿記論、財務諸表論)と、税法9科目なのですが、会計2科目は必須科目で、計算ベースと理論ベースで出題されます。数学類が苦手な方ですと、かなり大変です。

行政書士の場合は1年目での合格を目指すことは現実的に可能ですが、税理士ではまず無理でしょう。

社会保険労務士との難易度を比較した場合

難易度はほぼ同じと言われていますが、若干社会保険労務士の方が難しいかもしれません。ここ10年の合格率でみても、6〜7%で推移しています。

試験科目はまるで異なり、社会保険労務士の試験科目は、労働基準法、労働安全衛生法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法ほか全8科目です。行政書士と両方の資格を目指すとしますと、まったく異なる分野を2つ学習することになります。どちらかの資格にしぼるのなら、一度将来の自分像をはっきり描いてから受験を決めるといいと思います。

宅建士との難易度を比較した場合

主婦やサラリーマンの方でも取得する方が多いのが宅建士の資格で人気も高い資格です。 宅建士も難易度は低いとは言えませんが、行政書士よりは、はるかに難易度が低い資格といえるでしょう。実際、私は宅建士の試験にも合格して資格を持っていますが、その時の勉強時間は3ヶ月で合計100時間の勉強で合格しています。

行政書士の難易度まとめ

以上、行政書士試験の難易度についてデータを含めてまとめました。実際に見てみると、自分なりに肌感で難易度がつかめたのではないでしょうか?

行政書士は「法律試験の登竜門」というイメージがあり、決して試験が易しいというわけではありません。また試験制度の改正により、一層「法律家」としての素養が問われています。ただ、本気でやれば独学でも合格は絶対可能な資格試験でもあります。

やる上では、しっかりと地に足をつけて時間をかけて効率の良い学習を行っていきましょう。

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