行政書士として活躍をするためには、行政書士試験に合格し、国家資格である「行政書士資格」を取得する必要があることはすぐに想像がつくと思いますが、実は行政書士になるための方法として「行政書士試験に合格する」以外にも方法があるのをご存知でしょうか?
ここでは、一般的な方法として行政書士試験に合格する方法と、それ以外の行政書士として登録をする方法について解説しますので、しっかり理解しておきましょう。
目次
行政書士に必要なのは「資格」と「登録」
まず、行政書士になるために必要なものはなんでしょうか?それは行政書士になるための「資格」と、資格を取得した上で行う「登録」という2つのものが必要になります。それぞれについて見ていきましょう。
1.行政書士に必要なもの、その一「資格」
行政書士法の条文、第二条の項目には以下のように記されています。
行政書士法第2条(資格)
次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
一 行政書士試験に合格した者
二 弁護士となる資格を有する者
三 弁理士となる資格を有する者
四 公認会計士となる資格を有する者
五 税理士となる資格を有する者
六 国または地方公共団体の公務員として(中略)行政事務を17〜20年以上担当した者など
これを見るとわかるように、一般的に考えられる「行政書士試験に合格すること」以外にも、「弁護士・弁理士・公認会計士・税理士」の資格を持っているか、「行政事務に20年以上」従事していれば、行政書士試験を受けてなくても資格自体は持っていることになります。
「弁護士・弁理士・公認会計士・税理士」などは、行政書士よりも上位の資格とされます。これらの上位資格所有者については、行政書士資格を与え、試験を免除しているわけですね。
これらの上位資格所有者にとっても、本業に加えて行政書士登録をするケースというのはメリットがあり、実際のところかなり多くあります。
六の実務経験者からの登録は稀に存在しますが、公務員の場合だと定年退職まで勤務する場合が多いので、定年退職後に開業するようなケースとなる場合が多く、予め若いうちから行政書士として開業することを念頭にしている方は該当しないことがほとんどでしょう。
基本的には行政書士試験の合格がメインの手段
行政書士としての開業を目指すならば、基本的には行政書士試験の合格がメインの手段になります。
もちろん先に述べた通り上位資格を持っていることで行政書士になることもできますが、行政書士として開業するために行政書士より難しいとされる「弁護士・弁理士・公認会計士・税理士」から狙う方は少ないでしょうから、実際には行政書士を目指すからには行政書士試験を合格することがやはり常套手段になります。
欠格事由があるとそもそも行政書士になれない
行政書士法の第二条の2項にて、行政書士の欠格事由についても触れられています。欠格事由にある方は、行政書士試験に合格しても行政書士になることはできません。
行政書士法 第二条 2項(欠格事由)
一 未成年者
二 成年被後見人又は被保佐人
三 破産者で復権を得ないもの
四 禁錮以上の刑に処せられた者で、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しないもの
五 公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員を含む。)で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
六 第6条の5第1項の規定により登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
七 第14条の規定により業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
八 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しない者
2.行政書士に必要なもの、その二「登録」
さて、仮に行政書士試験に合格して資格を取得しても、それだけで「行政書士」と名乗ることは許されません。行政書士として名乗り、活動するには「行政書士としての登録」が必要になります。
実際には、以下のような流れになります。
- 各都道府県にある行政書士会に申請書を提出
- 行政書士会から行政書士連合会への進達
- 行政書士連合会での審査・行政書士名簿への登録
- 登録証などの発行
という流れを持って行政書士になることができます。
上記の流れは、行政書士法の第三章の第六条でも以下のように規定されています。
行政書士法 第六条(登録)
行政書士となる資格を有する者が、行政書士となるには、行政書士名簿に、住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければならない。
2 行政書士名簿は、日本行政書士会連合会に備える。
3 行政書士名簿の登録は、日本行政書士会連合会が行う。第六条の二(登録の申請及び決定)
前条第一項の規定による登録を受けようとする者は、行政書士となる資格を有することを証する書類を添えて、日本行政書士会連合会に対し、その事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会を経由して、登録の申請をしなければならない。
行政書士になるには、連合会の登録を受けなければなりません。試験合格だけでは行政書士とは名乗れません。当然、名刺には入れられませんし、履歴書には「行政書士試験合格」としか書けません。
行政書士登録には費用がかかる
行政書士に登録するには、都道府県によって異なりますが合計20万〜30万円程度の登録費用が必要になります。意外と高いんですよね・・・。また、登録後数千円の行政書士会への登録費として月会費が毎月数千円もかかってきます。
行政書士会に登録する際の書類や費用等は、以下のページでも解説しています。
→行政書士の開業資金 (1)自宅開業&最低限の費用で始める場合
→日本全国・各都道府県の行政書士会の一覧(入会金・月会費等の記載あり)
意外と登録費用が高いんですよね。では、行政書士試験に合格したらすぐにこの金額を払わなければいけないのでしょうか?
安心して下さい、答えはNOです。
試験合格後の行政書士の登録には、期限はない
行政書士の資格取得と、登録というのは別のことです。資格を取得したからといってすぐに登録しなければならないというわけではないんですね。
一度行政書士試験に合格した人は登録をしなくても無期限に行政書士の資格は保持されます。
ですので、すぐに開業する予定がない方は、行政書士試験に合格してからしばらくの間、行政書士としての登録を行わない、ということも可能です。安心して自分の好きなタイミングで行政書士登録することができます。