前回の記事ではリアル営業の極意について見ていきました。今回は、前回触れなかった営業チャネルのもう一方、ネット営業の極意についてを見ていきましょう。
行政書士の営業チャネル「インターネット」
ネット営業という言葉を聞くと、「とりあえずホームページを作ればいいのかな?」「メルマガ配信でもするのか?」「やった方がいいのはわかるがイマイチよくわからない」という方が多い方かと思います。しかし、何も考えずにWebサイトを作ったとしてもお客さんは来ませんし増えません。おそらくうまくいかないでしょう。
とはいえ、人脈などがある方は別として、普通の行政書士は営業手法としてネット営業を使わないわけにはいきません。
行政書士がネット営業を活用すべき3つの理由
では、このような現状の中で、ネット営業はどのように活用していけばいいのでしょうか?ネット営業を活用すべき理由は3つあります。
- ネット営業は、時間効率を高めることができる
- Web活用は、受注の安定化につながる
- 高額受注がねらえる
ネット営業は、時間効率を高めることができる
行政書士の持つ資源の中で最も重要な資源はなんでしょうか?「お金」でしょうか?「人脈」でしょうか?
どちらも大切といえますが、最も大切な資源は「時間」です。しかし、実際の営業活動や見込み顧客獲得のやり方を見ていると、多くの方は時間を有効に活用できていない可能性があるいえます。例えば、「異業種交流会に参加したはいいが、何の収穫がなかった」という話は私ではなくても、よく耳にする現実です。
仮に、異業種交流会に費やした時間が往復の移動時間も含めて4時間だとして、自分自身の時給を5,000円だと仮定したとすると、その交流会へは20,000円投資したことになります。異業種交流会が仮に無料だとしても、時間をお金に換算すると、20,000円の投資に伴うリターンがなければその分が損失になっていることを理解しなければなりません。こうした時間投資を考えると、ネット営業は時間帯効果・費用対効果が相対的に優れている方法と言えます。一度作ればずっとWeb上に存在し、異業種交流会の会場へ出かけることなく、基本的に手放しでの営業活動が可能になるからです。
ネット営業は、受注の安定化につながる
また行政書士は、スポットでの仕事が多く、稼ぐ人でも数百万円の売り上げがあがる月もあれば、数十万円の売り上げに落ち込んでしまう月もあり、安定的ではありません。そのため、売り上げの低いときは、不安な日々が続いたり、経営資源としても計画的な投資が難しくなったりという点がありますし、その変動に対して何も対策を打っていなければ、行き詰ってしまう可能性すらあります。
ネット営業を駆使して受注数を稼げるようになれば、月ごとの受注の変動をある程度まで平準化することが可能です。
高額受注がねらえる
一般的には、インターネット経由でお問い合わせをしてくるお客様は問い合わせの角度が様々で、仕事の依頼を考えている方からそうでない方までおり、「優良顧客」ばかりではないと言われています。
「価格を聞いて、それっきり電話がない」
「聞きたいことだけ聞いて、それ以降何も音沙汰がない」
というお客様が多いため、管理工数が増えたり、対応するばかりで時間を浪費してしまったり、インターネット経由でのお客様は契約しない人が多い、という声もよく耳にします。
しかし、それはWebが悪いわけではなく、ネット営業の方法に問題があるだけなのです。もしそのせいで、インターネット経由でのお客様を敬遠しているのであれば、損をしている可能性が非常に高いです。適したインターネット活用の方法を身につけることで、効率よく受注につなげたり、高額受注をすることも可能になります。
行政書士によるネット営業の手法
では具体的にどう動けばいいのでしょうか。インターネット初心者の方も含め、様々なネット営業の手法から行政書士としてどう動けばいいのかを考えていく必要があります。まず実際に可能なインターネットでの営業手法を考えてみましょう。簡単に考えるだけでも以下のようなチャネルがあります。
- 自分のホームページを作成する
- ブログを作成する
- クラウドソーシングで営業する
- SNSでの配信
- Webメディア、各種ポータルサイトへの掲載
- ダイレクトメールを送信
- メルマガ配信
- 広告を打つ
これらの営業手法を片っ端から実行していくのでもいいのですが、それぞれの営業手法について目的をはっきりさせないと狙ったような効果は出ません。なんとなく「お客さん来たらいいな」ではうまくいかないのです。なぜなら、これらはあくまでチャネル(経路)であって、それぞれのチャネルの効果や目的、やるべきことは異なるからです。
ここでも、リアル営業と同じく、「目的(ターゲット)」を具体的にイメージすることが重要になります。それぞれのチャネル、営業手法に対してどんな役割をもたせるのか?を考えてみましょう。
- 顧客への直接営業(アウトバウンド)
- 見込み客を作る、自分を知ってもらう
- 営業の受け皿としての役割
少しずつ具体性が見えてきたのがおわかりでしょうか。それぞれのチャネル(メディア)に対して、役割をしっかりと意識することで、より効果的なネット営業を実践することができます。ではそれぞれのチャネル毎に、どんな役割を持たせるべきかを見ていきましょう。
1.自分のホームページを作成する
現在では、行政書士がホームページ(Webサイト)を持つのは当たり前の時代になっています。ホームページは自動的に24時間体制で全国の人に営業をしてくれる営業マンのようなもので、営業力がない行政書士にも強い味方になってくれます。ただ、インターネット上では多くの行政書士がホームページを持っていますので、ただホームページを持つだけではほとんど意味がありません。
ホームページはそれ単体で顧客を獲得するというよりも、他メディアと連動した営業の受け皿として持っておくようにしましょう。ネット営業やリアル営業で露出が増えた時、自分のことをネットで検索した時に出てくるようにしておくのです。そして、そのためにまず自分が事務所がどこにあるのか、どんな業務を受けているのか、行政書士としての強みは何か、など自分を知ってもらうための情報を載せるようにしましょう。
技術があれば無料で作るのがよいですが、自分で作る自信がない場合はWeb制作のプロに頼むのもよいでしょう。注意点は、中途半端な内容は逆にマイナス印象も与えかねない、ということです。先ほどホームページは自動的に24時間営業してくれる営業マンのようなもの、と書きましたが良くない内容のホームページは悪評をも宣伝してしまいます。もちろん、最初から内容が充実していればそこから先はずっと良い内容を公告し続けてくれるので、最初からある程度しっかりしたものを作るつもりでいましょう。
役割
- 見込み客を作る、自分を知ってもらう
- 営業の受け皿としての役割
2.ブログを作成する
今や、ブログは立派なマーケティングツールです。Webマーケティングに力を入れている行政書士はほとんどがブログを書いているといっても過言ではありません。
なぜブログを書くとよいのかというと、SEO的な効果につながりやすいことと、自分を知ってもらうことで問い合わせへのハードルを下げることができるからです。そのため、ブログの内容としては行政書士業務に関することでキーワードを意識して書き、日常的な内容を書くのであれば自分のパーソナリティが伝わって好感を持ってもらえるような内容を意識して書くと良いでしょう。
また、行政書士としての仕事内容についてのブログ記事を書く場合は、お客さんにとっても役に立つ情報を意識して書くと良いでしょう。すると見に来た人は「役立つ情報を発信してくれた」ということで好意的に受け取ってくれ、何か必要な際に問い合わせをくれるかもしれない、見込み顧客になってくれます。ですので、ブログからホームページへの導線は必ず用意するようにしましょう。
また、ブログについてはAmebaブログやはてなブログなどブログサービスを使うか、Wordpressで独自ドメインでWebサイト一体型にするかなど様々な手法がありますが、それぞれメリット・デメリットがあります。それについてはいずれ別の記事でご紹介します。
役割
- 見込み客を作る、自分を知ってもらう
3.クラウドソーシングで営業する
「クラウドソーシング」というのをご存知でしょうか?クラウドソーシングというのは、インターネット上でサービス提供者と顧客をマッチングさせるWebサービスのことを言います。具体例としてWeb系の仕事が多いランサーズや、主婦向けのクラウドソーシングのシュフティなど、様々なサービスがあります。
クラウドソーシングは制約した段階で手数料がかかる、というものが多く、初期費用などがかからないのでノーリスクなのも安心です。もちろん業務はしっかりこなす必要はありますが。
現在は、行政書士の仕事もクラウドソーシングを通して受注できる時代です。クラウドソーシングでは「こういう仕事をしてほしい!」という人と「こういう仕事ができます!」という人両方の掲載ができるので、自分が出来ることを掲載して仕事を待つこともできれば、すでにニーズがあるお客さんにこちらから連絡して直接つながることができます。
役割
- 顧客への直接営業(アウトバウンド)
- 営業の受け皿としての役割
4.SNSでの配信
ここでいうSNSは、Twitter・Facebookをメインとしたソーシャルメディアです。これらのSNSは、直接的なコンバージョン(顧客からの問い合わせ)はあまり期待できないものの、見込み客とのつながりや、通常のお問い合わせより気軽な情報収集の場としてつかうことができます。
また、Google検索を対象としたSEO的な手法だとどうしても「自分で能動的に検索してくる方」にしかアプローチできませんが、SNSは上手に活用することで拡散していただきやすいので、「自分では検索しないけど実は需要がある受け身の方」に対してもアプローチすることができます。
SNS用にコンテンツを考えるのもよいですが、まずはブログと連動して情報発信をしていくのが良いでしょう。
役割
- 見込み客を作る、自分を知ってもらう
5.Webメディア、各種ポータルサイトへの掲載
地域のメディアやGoogleマップなど、自分で情報を登録できるWebメディアやポータルサイトに行政書士としての情報を積極的に記載しましょう。
これらのメディアは無料であることも多く、載せることにおけるデメリットはありません。基本的には自分の本サイトにリンクを貼るなどして自社サイトへの導線は必ず設けるようにしましょう。
役割
- 見込み客を作る、自分を知ってもらう
- 営業の受け皿としての役割
6.ダイレクトメールを送信
顧客になりそうな起業や組織に営業メールを送る方法です。ニーズがあればそのまますぐ仕事につながる可能性があります。しかし、自分でゼロから企業を調べるのは大変なので、リアル営業で知り合った会社さんやつながりを利用して、意味がありそうなお客さんに狙ってメールを送信してみるとよいでしょう。この場合も、名刺代わりとなるホームページへの導線も忘れずに記載しましょう。
ただ、あまり高頻度で何度も同じようなメールを送るのは嫌がられるだけでなく、信用問題にも関わりますので注意にしましょう。
役割
- 顧客への直接営業(アウトバウンド)
7.メルマガ配信
セミナーなどを自分で主催している行政書士さんの場合によく行うのが、メルマガ配信です。セミナーと言う場で講師と生徒、という形で関係を持っているのである程度信頼関係が築けていますし、定期的に役に立つ情報を配信すれば嫌がられることもありません。
メルマガ配信サービス自体は月数千円単位で使用できるので、もし定期的にセミナーなどを開催できる場合はぜひ活用するようにしましょう。最初は数十人単位でも、それが数千人単位になると非常に強力な見込み顧客となり、仕事が非常に安定するようになります。
役割
- 顧客への直接営業(アウトバウンド)
- 見込み客を作る、自分を知ってもらう
8.広告を打つ
インターネット広告を打つ手法です。お金さえかければある程度簡単にアクセスを集められるので、ある意味では簡単に行うことができます。しかし注意しなければならないのがそのお金がかかる、という点です。
ある程度「こういった仕事であれば労力に見合った利益が出せる」という実績があってキャッシュフローがわかっている場合には、広告費をいくらかければいくら売上が上がる、CPA(コンバージョン1件あたりにかかった広告費用を示す値)いくらまでだった広告費をかけてもよい、というのがわかります。
しかし、新米の行政書士さんの場合は広告費に見合った効果や、チャネルを見つけるのは難しいかもしれません。まずはお金のかからない方法で回せる仕事を見つけ、それに対し費用対効果が合うなら広告展開も検討する、というのがよいでしょう。
役割
- 顧客への直接営業(アウトバウンド)
行政書士のネット営業で大切な5つのポイント
ネット営業で成果を出すためには、きちんと考えて営業を組み立てていくことが必要です。以下の5つのポイントを参考に、コンテンツ制作を意識するようにしましょう。
- できるだけ、自分独自のPRポイントを考える
- お客様の立場に立った言葉、刺さるキャッチを作る
- 士業に適した集客方法ができている
- Webだけでは完結しない、リアルに持ってくるためのノウハウ
- 最終的にクロージングまで一貫した流れができていること
このなかで一番大切なポイントは、一つ目の「自分独自のPRポイントを考える」というポイントです。マーケティング戦略的に、これを「ポジショニング」と言います。
他の行政書士と比べたときに、適切なポジショニングができていなければ成果が出づらくなります。それだけライバルが増えるからです。逆に、独自のポジショニングさえしっかりしていれば、他の手段が弱くても成果が出やすくなります。
上記の5つのポイントを押さえることで、Web集客の基盤を整えることができます。
まずはホームページ、ブログを作ることから始めよう
いかがでしたでしょうか。ネット営業の方法を8つほどご紹介しましたが、そうはいってもまずは自社のホームページを作り、ブログを書いてみることから始めるのがやはり王道です。今では無料で作れるサービスも様々ですから、まずは自分の手を動かしてみるとよいでしょう。