行政書士資格取得のため勉強中のみなさん、「行政書士補助者」というのはご存知でしょうか?「補助者」というのは一般的には聞き慣れない言葉ですが、簡単にいうと「行政書士の仕事をサポートする人」のことをいいます。行政書士補助者について詳しく見ていきましょう。
行政書士補助者の仕事
行政書士補助者の仕事には以下のようなものがあります。
- 行政書士が作成する書類の下書きまたは清書
- 官公庁などへの提出、交付申請
- 顧客対応
行政書士補助者の仕事の大半は、事務所内での事務作業、書類作成の下書きや清書等、書類作成に関する仕事になります。また、作成した書類を元に官公署等に出向いて手続き・申請を行ったり書類を提出したりすることから、外出する頻度も高くなります。
それ以外にも行政書士事務所で発生する様々な雑務をこなします。
行政書士補助者と一般スタッフ・事務員の違い
行政書士補助者と一般的な事務員との違いは、補助者は行政書士業務に関する実務を補助できる点にあります。というのも、行政書士業務である書類作成や提出、各種の手続き・申請については行政書士以外だと補助者の資格がなければやってはいけないことになっています。
実際に、行政書士法第一章の第四条・第五条に補助者について以下のような記載があります。
第四条(他人による業務取扱の禁止)
行政書士は、その業務を他人に行わせてはならない。ただし、その使用人その他の従業者である行政書士(以下この条において「従業者である行政書士」という。)に行わせる場合又は依頼人の同意を得て、他の行政書士(従業者である行政書士を除く。)若しくは行政書士法人に行わせる場合は、この限りでない。第五条(補助者)
行政書士は、その事務に関して補助者を置くことができる。
2 行政書士は、前項の補助者を置いたとき又は前項の補助者に異動があつたときは、遅滞なく、その者の住所及び氏名を行政書士会に届け出なければならない。補助者を置かなくなったときも、また同様とする。
事務所内部の経理や電話応対等に関しては補助者でないスタッフが対応することは問題ありませんが、クライアントから依頼を受けた書類の清書や提出に関しては補助者が行うべきものとなります。
補助者であってもできないこと
たとえ行政書士補助者であっても、顧客から直接仕事の依頼を受けるといったことはできません。
補助者になるには「行政書士補助者登録」が必要
補助者になるには、「行政書士補助者登録」が必要になります。これは補助者になる人ではなく、補助者を雇う行政書士が所属する行政書士会に届け出を提出する必要があります。各都道府県の行政書士会によって書式等は異なるものの、概ね以下のものが必要になります。)
- 各都道府県の行政書士会への届出書
- 補助者の履歴書
- 補助者となる方の住民票
- 補助者となる方の写真
- 手数料(概ね2000円〜5000円)
具体的な手数料や提出までの期間、写真の枚数などは各都道府県の行政書士会によって異なりますので、詳しくはWebサイト等を御確認ください。
申請が完了すると「補助者証」が発行され、補助者業務が可能になる
補助者登録の申請すると、行政書士会によって「補助者証」が発行されます。補助者は補助者証があることで業務が行えるようになります。補助者証は基本的に勤務中は常に携帯し、身につけなくてはいけません。
また、役所などへ行った際には提示を求められます。補助者とは、行政書士会から正式に認可を受けたアシスタントなので、一般的な事務員が法的にすることのできない業務(顧客から依頼されて作成する書類の清書や、職務で官公庁に請求に行くなど)をすることが認められています。
ちなみに補助者の業務は、行政書士の資格は持っていなくても可能です。
辞める際に補助者証は返納する
もしその行政書士事務所の補助者を辞める際には、原則として補助者証は返納しなければなりません。また、行政書士は補助者の採用を解除したことを所属する行政書士会に報告・届け出する義務があります。補助者としてまた別の行政書士事務所に勤務する場合は、新たにその事務所の行政書士が補助者証を申請する必要があります。
登録情報が変更された場合は再度届け出が必要
補助者の住民票に変更があった場合など、情報に変更があった場合にも変更届と所定の手数料が必要になります。詳しくは各都道府県の行政書士会のWebサイトを御確認ください。
補助者証の有効期限と更新について
都道府県によりますが、原則として有効期限は2年間で、更新が手続きが必要な場合もあります。詳しくは各都道府県の行政書士会に御確認ください。
補助者になりたい方が持っていると便利なスキル・資格
補助者は欠格事由(犯罪者など)に該当しなければ一般的にどなたでもなることが出来ますが、業務遂行にあたって持っていた方が便利であったり、役立つスキル・資格もあります。具体的には以下のようなものです。
- 運転免許
- Excel,Word+基本的なPC操作スキル
- コミュニケーションスキル
運転免許
実際に補助者になってみると、官公庁などへ出向くことも多いので、電車の本数が少なかったり不便な地域へ行く場合は、自動車での移動が必要になる場合があります。もちろん必須ではありませんが、それを条件にしている事務所もあります。
Excel,Word+基本的なPC操作スキル
書類作成や清書、顧客管理や経理など、その他雑用を行う際にExcel,WordやPC操作のスキルは必須になる場合がほとんどです。一通り扱えると、行政書士事務所に入った後もありがたがられます。自信がない方は、入ってからでも一生懸命勉強しましょう。
コミュニケーションスキル
行政書士の仕事を手伝うにあたって、仕事の内容や指示を正確に理解したり、報告・連絡・相談を怠らないことというのは一般の仕事と同様重要な資質です。そこまで高いコミュニケーションスキルがなくてもよいでしょうが、きちんとした受け答えができることは最低限になるでしょう。
行政書士の卵が行政書士補助者になるのもあり
メリット1:資格取得前に補助者になって現実を知れる
行政書士を目指していたり、資格取得に向けて勉強中の人は、補助者になって働くこともよい経験になります。将来的に行政書士として独立することを目指した上で補助者になろう、という人は多いです。実務を通じて行政書士の仕事を間近で見たり、手伝ったりできるのだから当然ですね。
また補助者になることで、実際の行政書士の仕事がどれくらい大変なのか、自分にできそうかなど、行政書士になる前に経験して自分の適性を見る、といった観点からでも補助者になることは決して無駄にはなりません。
メリット2:資格取得後、開業前に補助者になって開業に備える
実際に行政書士の資格を持ちながら補助者として働いている人もいます。
補助者自体は高給ではありませんが、官公庁とのつきあい、報酬額の設定方法、問い合わせ対応、守秘義務やコンプライアンス、など多くのことを身につけたり実務の経験をたくさん積むことができます。いずれ自分が行政書士として独立することになった時に、補助者の経験が役に立つことは間違いありません。
補助者の採用情報、求人について
補助者の採用情報・求人については、行政書士事務所のホームページを見て探すのが早道です。正社員だけでなくパート・アルバイトでの募集もあります。また、アルバイト求人情報サイトなどでも事務スタッフと並んで募集されていることもあります。
正社員の場合だと、給与は一般的なサラリーマンとあまり差はないですが、行政書士を目指す方で勉強中のかたはまず行政書士補助者として働くと勉強にもなります。
ただ、行政書士は個人で開業されている方も多く、小さな個人事務所では金銭的・空間的な面から補助者を雇う余裕がないことも多く、補助者の求人自体はあまり多くありません。しかし大手の行政書士事務所などでは、たくさんの補助者が働いている場合もありますので、こまめに求人情報をチェックしてみましょう。
雇う立場の行政書士にとっての注意点
逆に、雇う側の行政書士は補助者を採用して業務をさせる際には、所属する各都道府県の行政書士会に登録の申請をする義務があります。それを怠ったがために処罰をえこともあります。
補助者登録自体はそれほど大変な作業ではないので、自分が行政書士として行政書士業務をさせるためにスタッフを雇う場合は、補助者を雇う際には忘れないように申請をしておきましょう。