行政書士試験は、一見すると法律を初めて学ぶ方には難しいと思われがちです。しかし決してそうではありません。きちんとした勉強法で学習を進めれば、独学でも十分合格が可能な試験です。
行政書士試験に合格することで、行政書士に登録するための資格が取得できることになります。まずはここで試験についてしっかりと知識を深め、一緒に合格を目指していきましょう。
行政書士試験の概要
受験資格 |
年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます。 |
---|---|
試験科目と内容等 |
「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題) 「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題) |
試験場所 | 全国で受験可能(毎年7月の第2週に公示) |
取得期間の目安 |
半年~1年 |
受験費用 |
受験手数料 7,000円 |
試験日及び時間 |
毎年11月の第2日曜日(年1回のみ) |
行政書士試験は行政書士法に基づき、総務大臣が定めるところにより、行政書士の業務に関し必要な知識及び能力について、毎年1回以上行うこととされています。
試験内容
試験科目
「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題)
- 基礎法学(択一)
- 憲法(択一・多肢)
- 行政法(択一・多肢・記述式)
- 民法(択一・記述式)
- 商法(択一)
「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題)
- 政治・経済・社会
- 情報通信・個人情報保護
- 文章理解
出題形式
筆記試験によって行われ、出題の形式は、「行政書士の業務に関し必要な法令等」は択一式及び記述式、「行政書士の業務に関連する一般知識等」は択一式です。記述式は、40字程度で記述解答するものが出題されます。
出題形式 | 科目 | 問題数 | 配点 | |
---|---|---|---|---|
法令等 | 5肢択一式 | 基礎法学 | 2問 | 8点 |
憲法 | 5問 | 20点 | ||
行政法 | 19問 | 76点 | ||
民法 | 9問 | 36点 | ||
商法・会社法 | 5問 | 20点 | ||
多肢選択式 | 憲法 | 1問 | 8点 | |
行政法 | 2問 | 16点 | ||
記述式 | 行政法 | 1問 | 20点 | |
民法 | 2問 | 40点 | ||
一般知識 | 5肢択一式 | 政治・経済・社会 | 8問 | 32点 |
情報通信・個人情報保護 | 3問 | 12点 | ||
文章理解 | 3問 | 12点 | ||
合計 | 60問 | 300点 |
《択一式問題の例》
択一式問題とは、五つの選択肢の中、または多肢(1~20)の中から答えを選ぶマークシート式の試験です。法的問題を解決するために必要な知識や思考力が問われます。
■平成26年度 問題30 (物権II) 出題例
物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。
- 対抗要件を備えた抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた後であっても、第三債務者がその譲受人に対して弁済する前であれば、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
- 対抗要件を備えた抵当権者が、物上代位権の行使として目的債権を差し押さえた場合、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたとしても、それが抵当権設定登記の後に取得したものであるときは、当該第三債務者は、その反対債権を自働債権とする目的債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。
- 動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、動産の買主が第三取得者に対して有する転売代金債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた場合であっても、当該動産の元来の売主は、第三取得者がその譲受人に転売代金を弁済していない限り、当該転売代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
- 動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、買主がその動産を用いて第三者のために請負工事を行った場合であっても、当該動産の請負代金全体に占める価格の割合や請負人(買主)の仕事内容に照らして、請負代金債権の全部または一部をもって転売代金債権と同視するに足りる特段の事情が認められるときは、動産の売主はその請負代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
- 抵当権者は、抵当不動産につき債務者が有する賃料債権に対して物上代位権を行使することができるが、同不動産が転貸された場合は、原則として、賃借人が転借人に対して取得した転賃貸料債権を物上代位の目的とすることはできない。
正解→3(左のエリアを選択して反転すると見えます)
《記述式問題の例》
40字程度で解答を記述するものが出題されます。記述式問題が出題されて以来、例年行政法から1問、民法から2問出題されています。
■平成26年度 問題44 (行政法からの出題)
A市は、同市内に市民会館を設置しているが、その運営は民間事業者である株式会社Bに委ねられており、利用者の申請に対する利用の許可なども、Bによってなされている。住民の福利を増進するためその利用に供するために設置される市民会館などを地方自治法は何と呼び、また、その設置などに関する事項は、特別の定めがなければ、どの機関によりどのような形式で決定されるか。さらに、同法によれば、その運営に当たるBのような団体は、何と呼ばれるか。40字程度で記述しなさい。
正解→公の施設と呼び、設置などはA市議会による条例で定められる。Bは指定管理者と呼ばれる。
(矢印の右側のエリアを選択して反転すると見えます)
合格基準
- 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50%以上である者。
行政書士試験は法律家となるための試験ですので当然重要になってくる科目です。
中でも民法・行政法は実務に出てからも必須の法律となります。 - 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40%以上である者。
出題数14問ですが、政治・経済・社会の学習範囲は幅広いため、独学では非効率な学習になりがちです。
一般知識等の基準点を突破するためには、効率の良い学習方法が必要となります。 - 試験全体の得点が、満点の60%以上である者。
1と2の基準点をクリアしても、総得点で34点分不足しています。
一般知識等は範囲が広く、出題予測も難しいため、法令等科目での得点獲得がキーとなります。
合格率
年度 | 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成28年度 | 53,456人 | 41,053人 | 4,084人 | 9.95% |
平成27年度 | 56,965人 | 44,366人 | 5,820人 | 13.12% |
平成26年度 | 62,172人 | 48,869人 | 4,043人 | 8.27% |
平成25年度 | 70,896人 | 55,436人 | 5,597人 | 10.10% |
平成24年度 | 75,817人 | 59,948人 | 5,508人 | 9.19% |
平成23年度 | 83,543人 | 66,297人 | 5,337人 | 8.05% |
平成22年度 | 88,651人 | 70,580人 | 4,662人 | 6.60% |
平成21年度 | 83,819人 | 67,348人 | 6,095人 | 9.05% |
平成20年度 | 79,590人 | 63,907人 | 4,133人 | 6.47% |
平成19年度 | 81,710人 | 65,157人 | 5,631人 | 8.64% |
平成18年度 | 88,163人 | 70,713人 | 3,385人 | 4.79% |
平成17年度 | 89,276人 | 74,762人 | 1,961人 | 2.62% |
上記の表を見てみると、ここ数年は合格率が概ね10%前後で推移していることがわかります。行政書士試験の特徴として相対評価ではなく、絶対評価であることに注目できます。絶対評価とは何点以上で合格という風な評価基準であり、合格者数の定員がありません。
したがって、問題の難易度自体がそのまま合格率に反映される試験となっています。